トレーニングの期分けとは?長距離の練習メニュー(1週間・シーズン全体)の組み方も解説

ランニング

トレーニングメニューを考えてみたけど…
そもそもトレーニングメニューの組み方が分からない
メニューは決まったけど、1週間のローテーションが決められない
などの悩みを持った方もいるのではないでしょうか?

ですが、これらの悩みも期分けという考え方を使うことで解決できるかもしれません。

そこで今回はトレーニングの期分けについて解説していきます。

併せて、練習メニュー作成のポイントについても解説していきたいと思います。

中・長距離の練習メニュー作成のポイント

期分けについて知る前に、まずは練習メニューを作成する際のポイントを押さえましょう。

主なポイントは、以下のとおりです。

練習メニュー作成のポイント
  • 「練習の目的」を答えられるようにする
  • 15〜20分のレース=追い込んで走る練習でもある
  • 2日連続で高強度練習をおこなう(Back to Back Training Days)
  • トレーニング強度は4〜6週間一定にする
  • トレーニング強度は心拍数を目安とする

それぞれ解説していきます。

「練習の目的」を答えられるようにしておく

やや精神論のように聞こえるかもしれませんが、「どんな能力を強化するための練習か?」を把握することは非常に重要です。

なぜなら、目的も分からずに練習をすると、ケガのリスクが高まるなどむしろ逆効果となる可能性もあるためです。

また、「練習の目的」を答えられるようにしておくことは意識性の原則からも重要です。

詳しくはこちらの記事で解説しているので、参考にしてください。

「15〜20分のレース」=「追い込んで走る練習」と考える

よく「練習を積んで、完璧に仕上げてから自己ベストを狙いたい」という理由で、なかなか記録会にエントリーしないランナーを目にします。

ですが、実戦経験に勝るものはありません。むしろ、実戦経験が少ないことで狙っていたレースで緊張し、実力を出し切れない可能性もあります。

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一方、「記録会も練習メニューの1つ」と考えれば、たとえ結果が悪くても追い込んで走る練習ができたという点でプラスになります。

2日連続で高強度練習をおこなう(Back to Back Training Days)

なぜ2日連続で高強度練習をおこなうのか?それは、オーバーワークを防ぐためです。

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2日連続でポイント練習となれば、初日で全ての体力を使い切ろうとはしませんよね。

「でも、2日連続でポイント練習なんて疲労でこなせない…」と感じる方もいるかと思います。

ですが、筋疲労は48時間後に表れることが多いといわれています。つまり、24時間後であれば高強度練習をこなすことは可能なのです。

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ただし、この方法が絶対ではないので、調子が悪い日は間隔を開けるなど適宜調整することが大切です。

トレーニング強度は4〜6週間一定にする

トレーニング強度は慎重に上げなければいけません。

では、何を基準にすれば良いのでしょうか?

最も参考となる指標はレースの結果です。

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レースタイムを参考にすることで、適切なトレーニング負荷を設定することができ、トレーニング効果の増大・ケガの防止につながります。

結論、トレーニング強度を上げるタイミングは以下の2つをオススメします。

  • 現在のトレーニング強度を4〜6週間維持したあと
  • 自己ベストを更新したとき

トレーニング強度の指標は「心拍数」

トレーニング強度=「速度」と考えがちですが、実はそうではありません。

「心拍数」こそ、トレーニング強度の指標であると言えます。

では、なぜ心拍数を指標とすべきなのか?また、押さえておくべきポイントは?

それぞれ以下のとおりです。

トレーニング強度の指標としての「心拍数」
  • 同じ速度で走っていても、コンディションによって強度は変わるため
    →気温、コースのアップダウン、路面によって強度は変わる
    例:10kmを4‘00/kmで走る場合であっても…
     ・気温25℃かつ平坦なコース
     ・気温40℃かつ上り坂のコース
     →それぞれ強度は異なる
  • 自分の最大心拍数(HRmax)を知ることが重要
    →トレーニング強度は自身の最大心拍数に対する割合を基準に考えるから
    →800mを数本走れば測定できる
     1本前の最大心拍数と比較して…
    ・高い→もう1本走る
    ・低い→1本前の最大心拍数=自身の最大心拍数

ちなみに、心拍数をモニターするのにオススメなのが心拍ベルトです。

心拍計付きのランニングウォッチでも計測できますが、これにはかなり誤差が生じます

(例:実際は心拍数120で走っているのにウォッチでは心拍数180と表示されるなど)

そのため、より正確性の高い心拍ベルトの使用をオススメします。

・GARMIN(ガーミン)のウォッチを使っている方はこちら↓

・SUUNTO(スント)のウォッチを使っている方はこちら↓

シーズントレーニング(期分け)

メニュー作成のポイントについて押さえたところで、さっそく期分けについて解説していきます。

期分けとは、1シーズンを複数の時期(フェーズ)に分割して考えることです。

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各フェーズごとに目的重点的に強化するポイントを設定して、それに沿った練習メニューを組みます。

主に、以下の4つのフェーズに分けて考えます。

  • フェーズⅠ(基盤)
  • フェーズⅡ(質重視の初期)
  • フェーズⅢ(移行期)
  • フェーズⅣ(質重視の最終段階)

それぞれ詳しく解説していきます。

※これ以降の説明は、こちらの記事をもとにしています。

フェーズⅠ:基盤の構築

フェーズⅠの目的は基盤(Foundation)の構築ケガの予防(Injury-Prevention)です。

そのため、トレーニングの大部分は基礎(Base)トレーニングをおこないます。

フェーズⅠのトレーニング方法
  • ほとんどをEランニングにする
  • EペースのL(Long)ランニングを週1回おこなう
    ※週間走行距離の25〜30%

フェーズⅠを3週間以上おこなう場合は軽いウィンドスプリント(WS)をEランニングに追加します。

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ウィンドスプリントの方法は…
・10〜15秒間の素早い動きのラン
・数本繰り返す
・つなぎは完全休息(walk)にする
・Eランニングの最中or後におこなう

また、プラスαで軽いレジスタンストレーニングダイナミックスストレッチングをおこなうようにしましょう。

レジスタンストレーニング
→対象となる筋肉(主動筋)に抵抗(Resistance)を繰り返しかけるトレーニング

ダイナミックスストレッチング
→対象となる筋肉の拮抗筋を使い、実際の競技の動作を取り入れ柔軟性を向上させるストレッチ(いわゆる動的ストレッチのこと)

※主動筋…動作を行う際にメインとなる筋肉
※拮抗筋…主動筋と反対の動きをする筋肉のこと(例:主動筋が収縮→拮抗筋は伸張)

中長距離ランナーの筋トレについては、こちらの記事を参考にしてください。

また、動的ストレッチをおこなうことで、練習やレースでのパフォーマンスが向上することも分かっています。

フェーズⅡ:質重視の最初のフェーズ

フェーズⅡは、質(Quality)を重視した最初(Initial)のフェーズです。

フェーズⅡのトレーニング方法
  • 週2回Rトレーニングをおこない、その間にEデーを2日はさむ
  • 週1回のLランニングはフェーズⅡでも継続する

次のフェーズへ移行する際に注意点があります。それは、新たに増やす運動刺激は1つに絞るということです。

なぜなら、運動刺激を2つ以上増やすと負荷が大き過ぎて十分にトレーニングをこなせないためです。

例:EランニングからIランニングへ移行すると…

Eランニング=基礎・基盤の構築
      ↓
Iランニング=①スピード+②有酸素性システム(VO2max)の刺激

→スピードが身に付いていないためメニューを充分にこなせず、有酸素性システムへ充分な刺激を与えられない

また、ペース設定をおこなう際は前シーズンのベストタイムを基準にしないようにしましょう。

適切な負荷をかけるためには、フェーズⅡ時点でのレース記録をもとに設定することが大切です。

フェーズⅢ:移行期

フェーズⅢは、質を重視した移行期(Transition)のフェーズです。

通常、フェーズⅢが最もハードなフェーズとなります。

フェーズⅢのトレーニング方法
  • 主にIトレーニングをおこなう
    →有酸素性システムへの運動刺激
  • ただし、ランニング速度は上げない
    →運動刺激が2つになってしまうため
  • 週1回のLランニングも継続

フェーズⅢ以降のトレーニングは、目標とする種目により幅があります。

中距離種目(800m〜5000m)の場合
・Iトレーニングは週1回だけおこなう
Rトレーニングを継続する
→さらにスピードを高めるため

長距離種目(10000m〜)の場合
・Iトレーニングを週2回おこなう
・3000m以上のレースに出た週は週1回
→有酸素性システムに大きな負担をかけたため

フェーズⅣ:質重視の最後のフェーズ

フェーズⅣは、質を重視した最後(Final)のフェーズです。

このフェーズでパフォーマンスをピークに持っていきます

フェーズⅣのトレーニング方法
  • Tランニングに移行する
  • ただし、強度はIトレーニングほど強くない

フェーズⅣは、各自の種目に向けたトレーニング内容となります。

中距離種目(800m〜5000m)の場合
・1回の練習にTランニングとRランニングを組み込む
→レースに向け、身体にキレが出てくる

長距離種目(10000m〜)の場合
・Tトレーニングのみに集中(=Iトレーニングは続けない)
※ただし、狙っているレースが有酸素性システムを最大限に追い込むものである場合を除く
・毎週Lランニングを行いレースに出ている場合、Tトレーニングは週1回
・Tトレーニングの最後に短いRランニング(200m×4〜6)を行う
→長距離種目でも身体のキレは必要なため

期分け:まとめ

期分け全体の考え方をまとめると、以下のとおりです。

期分けのまとめ
  • 「E→R→I→T」の順に移行する
    →Eランニングはほぼ毎日おこなう
  • 「メインタイプ+サブタイプ」で考える
    →サブタイプ=前フェーズで得た能力の維持
  • 「レース=トレーニング」と考える
    →5〜20分程度のレースは有酸素性システムに最大限の刺激を与える
    (=Iトレーニングとして最高)

各フェーズごとに目的を設定し、各自の種目に合った方法でトレーニングをおこなうことが重要となります。

とくに、基盤(E)→スピード(R)→VO2max(I)→持久力(T)という流れは非常に重要です。

トレーニング内容を検討する順番

各フェーズの目的・トレーニング方法について理解できたところで、さっそくトレーニングメニューを考えていきます。

しかし、フェーズⅠから順番にメニューを考えていくわけではありません。

実は、トレーニングメニューを考える際にも順番があります

メニューを考える順番は以下のとおりです。

上記の通り、トレーニングメニューは
①フェーズⅠ
②フェーズⅣ
③フェーズⅢ
④フェーズⅡ
という順番で考えます。

①フェーズⅠ

まず、フェーズⅠのトレーニングメニューから考えます。

フェーズⅠはシーズンの開始点であり、高校生や大学生であれば新学期が始まる前となります。

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一方、学生競技のシーズンに関係ないランナーは、狙っているレースに向けてベストなタイミングであれば開始点はいつでも問題ありません。

また、6週間以上トレーニングを継続しておこなっていた場合、フェーズⅡからでも問題ありません。

さらに、直近3〜4週間に質の高いRトレーニングを中断なく継続できていれば、フェーズⅢから始めることも可能です。

②フェーズⅣ

次に考えるのがフェーズⅣです。

なぜ、フェーズⅣの練習メニューを2番目に考えるのか?

それは、最終的な目標から逆算して年間のメニューを組むためです。

例:1500m3分台が今シーズンの目標

○月に1500m3分台達成

X月までに1500mX’XXを達成する

そのために必要な練習メニュー(および強度)は?

③フェーズⅢ

3番目に考えるのがフェーズⅢです。

フェーズⅢでは、フェーズⅣのトレーニングに向けた準備をおこないます。

そのため、フェーズⅣを先に考えておく必要があるのです。

④フェーズⅡ

最後に考えるのがフェーズⅡです。

フェーズⅡは、フェーズⅢのトレーニングへの準備となります。

基本、前フェーズのトレーニングが次フェーズへの準備となります。

必要に応じて各フェーズの長さを決める

ここまで各フェーズの目的やメニューを考える順番について解説してきました。

ここからは、シーズンを通してのトレーニング計画を実際の日付に落とし込んでいきます

では、各フェーズに何日ずつ割り当てればよいのでしょうか?

基本的な考え方は以下のとおりです。

  • 1シーズン=24週間で想定
  • 1フェーズ6週間
    (=24週間÷4フェーズ)
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ただ、「目標レースまで時間が無くて24週間も練習ができない」という場合もあると思います。

その場合、各フェーズを短縮します。

1シーズンに使える残りの期間から逆算し、パフォーマンスへの影響が最も小さい週から省いていきます

その際に参考となるのが、以下の図です。

この図は、残り週数から逆算して各フェーズの割当を示したものです。

例えば、残り3週間しか無い場合は全てフェーズⅠに時間を割きます。

なぜなら、直前まで身体が受けていた運動刺激が弱いほど、負荷の軽いトレーニングから得られる効果は大きくなるためです。

最も危険なのがいきなりハードな練習をすることです。

これでは、かえってケガや不調、病気を引き起こすことになります。

残り9週間の場合、フェーズⅠ・Ⅱ・Ⅳのみを実施して、フェーズⅢのトレーニングは実施しません

1週間のトレーニング例

各フェーズの期間が決まったら、次は1週間のトレーニングの流れを決めます。

例として、以下の図を参考にしてください。

※用語について
L(Long)=ロングラン
Q(Quality)=ポイント練習
E(Easy)=jog

1週間のメニューを決めるに当たって、基本となるルールがあります。

基本ルール
  • 週の初日→Lランニング
  • Q1=1週間のうち最重要な練習

まず、週の初日にLランニングをおこないます。

Lランニングは全フェーズでおこなうため、非常に重要です。

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週の初日を何曜日とするかは、各自の日程に合わせて調整しましょう。

また、Q1=1週間のうち最も重要な練習と位置付けます。

なぜなら、悪天候などで十分に練習ができない週でも、最も大切な練習だけは確保できるためです。

具体的には、以下の3パターンに分けてトレーニングを組みます。

1週間のQデー(ポイント練習)
  • 毎週末レースに出ないとき
    2・4・7日目をQデーとする
  • ポイント練習を2日連続で行うとき
    (Back to Back Training Days)
    3・4・7日目をQデーとする
  • 週末に重要なレースを控えているとき
    レース4日前にQ1のみ行う

1つ目と2つ目はQ3=レース(記録会)とすることも可能です。

3つ目はレース=Q2とみなします。

1シーズンのトレーニング例

1週間のメニューの流れが決まったら、シーズン全体のトレーニングについても考えましょう。

一例として、以下のようなシーズントレーニングが挙げられます。

シーズンのトレーニング例
  • フェーズⅠ
    • 日曜日=Lランニング
    • その他の日=Eランニング
  • (うち3日はウィンドスプリントを行う)
  • フェーズⅡ
    • 日曜日=Lランニング
    • Q1=R200m×X本
    • Q2=R200m&400m×X本
    • Q3=R400m×X本
    • その他の日=Eランニング
  • フェーズⅢ
    • 日曜日=Lランニング
    • Q1=I1000m×X本
    • Q2=T20分+R200m×X本
    • Q3=レース or I1200m×X本
    • その他の日=Eランニング
  • フェーズⅣ
    • 日曜日=Lランニング
    • Q1=Tランニング+R200m×X本
    • Q2=レース
    • その他の日=Eランニング

なお、シーズン全体のトレーニング計画を立てる際は、以下の点を意識しましょう。

トレーニング計画の前提
  • トレーニング計画はシーズン開始前から組んでおく
  • 計画はシーズン中に適宜調整する
    • レースの予定
    • 天候の変化
    • トレーニングの中断
    • 現時点での体力レベル…etc.
  • 次のフェーズに移行するとき、運動刺激は1つに絞る
  • 自分の強みと弱みを考慮する

このなかで、特に注目して欲しいのが自分の強みと弱みを考慮するという点です。

では、どうやって自分のタイプを把握すればよいのでしょうか?

こんなときにこそ、自身のレースタイムを参考にします。

以下の表を見てください。

スピード対持久力対応表

この表はスピード対持久力対応表といい、スピードと持久力の関係を示すものです。

これを使って、自身のタイプを把握していきます。

具体的な方法については、以下のとおりです。

①自己ベストに最も近いタイムを丸で囲む
②丸で囲んだタイムを線でつなぐ
③線の形で強み・弱みを把握する

  • 【\】右下がりの線
    スピードが持久力より勝っている
  • 【―】水平線
    →スピードも持久力も同レベル
  • 【/】右上がりの線
    持久力が優れている
  • 【∨】800mで落ち込む線
    →800mの自己ベストを更新する力がある
  • 【^】逆V字型の線
    →レースでの出走回数が少ない

自身の強みと弱みが把握できたら、まずは弱点を強化します。

しかし、シーズンを通して結果が出なければ、次シーズンからは強みを磨くことに注力しましょう。

なぜなら、強みを磨くことで同時に弱みが克服されることもあるためです。

まとめ

今回は、トレーニングの期分けについて解説してきました。

もう一度ポイントをおさらいしておきましょう。

期分けのポイント
  • シーズンは4つのフェーズに分けて考える
  • メニューはE→R→I→Tの順に移行する
  • フェーズを検討する順番はⅠ→Ⅳ→Ⅲ→Ⅱ
  • 必要に応じて各フェーズの長さを変える

シーズンを分割して考えることで、トレーニングの目的がより明確になります。

また、前もってメニューを考えておくことでトレーニングにより集中でき、質の高い練習を継続できるようになります。

ぜひ、期分けという考え方を取り入れてみてください。

今回の参考書籍

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