運動前の静的ストレッチは逆効果?動的ストレッチの効果とは?

疲労・睡眠

運動前の静的ストレッチはやめたほうが良い?
動的ストレッチの方が効果的?

ストレッチについて、一度はこのような文言を耳にしたことがあるのではないでしょうか?

実は、誤ったタイミング・方法のストレッチは効果が無いどころか、むしろ逆効果となります。

そこで今回は、「効果的なストレッチのメニュー・タイミング」について解説していきます。

結論

結論、静的ストレッチをおこなうと、その後1時間以上パワーとスピードが低下します。

最近では、ストレッチに関して以下のようなアドバイスがなされています。

  • 冷えた状態で筋肉を伸ばさない
  • 軽いジョグなどで筋肉を緩めてからストレッチをする
  • 痛みを感じない程度に筋肉を伸ばす

しかし、これらのアドバイスに従っても一時的な後遺症(パワー・スピードの低下)は起こり得ます

それどころか、静的ストレッチをしてから最大2時間以上、後遺症が持続するという研究結果さえあります。

練習・レース前の静的ストレッチでパフォーマンスが低下するワケ

そもそも、なぜ運動前に静的ストレッチをおこなうとパフォーマンスが低下するのでしょうか?

主に、以下の理由が挙げられます。

静的ストレッチでパフォーマンスが低下するワケ
  • 筋肉・腱が緩むため
  • 神経系の働きを阻害するため
  • 上記2つの組み合わせによるもの

筋肉・腱が緩むため

なぜストレッチによりパフォーマンス低下するのか?

それは筋肉や腱が緩んでしまうからです。

では、なぜ筋肉や腱が緩むとパフォーマンスが低下するのでしょうか?

それは、筋肉や腱が弛緩すると力を効率良く骨へ伝達することができなくなるためです。

Y
Y

これはヨットの帆と同じ理屈です。ロープをピンと張っていないと帆を調整できないですよね。

また、肉眼では見えないミクロレベルでは筋繊維の1本1本が短くなるほどより力を発揮すると考えられています。

神経系の働きを阻害するため

また、ストレッチによるパフォーマンス低下の理由として神経系への影響が挙げられます。

ストレッチによる後遺症で脳から筋肉への「収縮せよ」という信号が阻害されるため、パフォーマンスが低下するのです。

「筋肉の弛緩」と「神経系の阻害」が組み合わさった結果

最も可能性が高いのは、「筋肉の緩み」と「神経信号の伝達阻害」という2つの要因が組み合わさったケースです。

Y
Y

つまり、ストレッチによるパフォーマンス低下は「筋肉の緩み」と「神経信号の伝達阻害」のどちらか一方だけが原因ではないということです!

こうしたストレッチによる一時的な後遺症(パワー・スピードの低下)は、様々な研究によって明らかになっています。

ミラノ大学の研究

ストレッチによるパフォーマンス低下について、2010年にミラノ大学で研究がおこなわれました。

この研究では、17人の被験者にスクワットの姿勢から垂直跳びをさせました。

その際、以下の2パターンで記録を測定しました。

  • 跳ぶ前にストレッチをした場合
  • 跳ぶ前にストレッチをしなかった場合

その結果、
・跳躍高
・ピーク時の筋出力
・最大速度(最大運動エネルギー)
の全ての項目において、ストレッチをした場合のほうが低い数字が出たといいます。

マックマスター大学の研究

マックマスター大学の研究では、一定時間のストレッチ後の脚の状態について研究がおこなわれました。

被験者にふくらはぎの筋肉を一定時間ストレッチさせたところ、以下の結果が見られたといいます。

  • 神経信号の送信に関する力が弱まり、その状態が15分続いた
  • 筋力自体も低下して、元の筋力に戻るのに最長1時間かかった

運動前の最適なウォーミングアップとは?

運動前の静的ストレッチがパフォーマンスの低下につながることは分かりました。

では、運動前にはどのようなウォーミングアップが最適なのでしょうか?

ずばり、動的ウォーミングアップが最適であるといえます。

Y
Y

ウォーミングアップというと「数分程度の軽いジョグ」などが思い浮かぶと思いますが、実はそれだけでは不十分です!

種目ごとに使われる筋肉を調整するには、使用する筋肉を可動域いっぱいに動かす必要があるのです。

最初は力を入れずにゆっくりと筋肉を動かし、徐々に勢いをつけていくことがポイントです。

また、従来のストレッチのように静止状態を保つのではなく、動きながらストレッチを行うことが重要です。

そもそもウォーミングアップの目的とは?

そもそも、なぜウォーミングアップをするのでしょうか?

2006年のアメリカ軍の研究によると、ウォーミングアップの主な目的には以下のようなものが挙げられます。

ウォーミングアップの目的
  • 筋肉や腱の柔軟性を高める
  • 血流を末端まで行き渡らせる
  • 体温を上げる
  • 自発的な協調運動を向上させる

※協調運動とは…目と耳、手と脚のように別々に動く機能をまとめて動かす運動のこと
例:「走る」=「腕振り」+「脚で地面を蹴る」

ウォーミングアップは上記の目的を満たす内容でなければならないといえます。

目的も分からずに形式的にアップをおこなうと、むしろ逆効果となります。

動的ウォーミングアップに関する研究

では、本当に動的ウォーミングアップには効果があるのでしょうか?

Y
Y

これについては、動的ウォーミングアップの原理に関するアメリカ軍の研究が参考となります!

この研究では、入隊したばかりの兵士に、
・動的ウォーミングアップ
・静的ウォーミングアップ
のどちらかを10分間おこなわせました。

その後、敏捷性とパワーに関する3つのテスト(往復持久走・メディシンボール投げ・五段跳び)を実施しました。

その結果、動的ウォーミングアップをした兵士は、静的ストレッチを行った兵士に比べ、3つのテストで良い成績を残しました

動的ウォーミングアップの長期的効果とは?

また、動的ウォーミングアップには長期的な効果もあるといわれています。

2008年ワイオミング大学の研究では、動的ウォーミングアップを繰り返し行うことで得られる長期的な効果について調査がおこなわれました。

この研究では、アメリカ軍の研究と同じ方法で大学のレスリング選手らを4週間観察しました。

その後、体力・持久力・敏捷性・無酸素性運動能力を測定するために、幅跳び・腹筋運動・腕立て伏せ・600m走を実施しました。

すると、以下のような結果が見られました。

  • 動的ウォーミングアップを継続した選手は測定値全体が向上した
  • 一方、静的ストレッチをした選手はどの項目も改善しなかった

動的ウォーミングアップの基本ルール

では、どのように動的ウォーミングアップを行えば良いのでしょうか?

ルイジアナ州立大学のジェイソン・ウィンチェスターは、動的ウォーミングアップを3つの段階に分けることを提案しています。

動的ウォーミングアップの基本:3段階

①低負荷でリズミカルに動くことで、心拍数と体温を上昇させる

例:ジョグ、水泳、自転車漕ぎなどを最低5分間おこなう

②動的な基本練習を数分間おこない、筋肉を必要なだけその可動域内で動かす

例:スクワット、腕回し、スキップをそれぞれ10回ずつおこなう

③その後におこなう運動に備えて、その運動に見合った動きをして仕上げる

例:レース前など本格的に走る前ならば、短い距離を何本か軽く走ってみる(ウィンドスプリント、ながし)

このルールはウォーミングアップ後の運動備えて行うものなので、どのスポーツにも応用できます

また、運動が激しくなればなるほどウォーミングアップは慎重に行わなければならないと、ウィンチェスターはいいます。

動的ストレッチの基本メニュー

では、具体的にどんな方法・メニューで動的ストレッチを行えばいいのでしょうか?

詳しくは、以下を参考にしてください。

動的ストレッチのメニュー
  • 5分間の軽めのjogから開始する
  • 以下のメニューをそれぞれ10回繰り返す

①ハイニー
・脚をゆっくり高く上げることを意識しながら前進する
・歩幅をかなり短くする
・背筋を真っ直ぐに伸ばす

②ヒールキック(ヒールタッチ)
・かかとを臀部に接触するまで上げるながら、ゆっくり前進する
・歩幅は短くする
・主に膝下を動かすことを意識する

③ウォーキングランジ
・上体を低くして大きく前に一歩踏み出す
・太ももが地面と平行になるようにする
・その状態から逆脚で同じ動作を繰り返す

まとめ

今回は運動前のストレッチ、最適なウォーミングアップについて解説してきました。

ストレッチ・ウォーミングアップについて
  • 静的ストレッチをおこなうと、その後1時間以上パワーとスピードが低下する
  • 動的ウォーミングアップをおこなうことで、筋力や持久力を損なうことなく運動の準備ができる

動的ストレッチをおこなうことで、自己ベスト更新・より多くの練習効果の獲得などにつなげることができます。

レース・練習前に是非取り入れてみてください。

以上、Yでした!

今回の参考書籍

『良いトレーニング、無駄なトレーニング』(アレックス・ハッチソン著 草思社)

僕自身も類似の書籍を何冊も読みましたが、トレーニングへ即応用できる情報がたくさん載っていて非常に参考となりました。

  • 著者は元カナダ代表の長距離ランナー/物理学博士という経歴の持ち主
  • 「目次が疑問形式で書かれている」ので、知りたいこと・気になることをピンポイントで知ることができる
  • 具体的なトレーニング方法、食事・水分補給のポイント、メンタルとパフォーマンスの関係など、幅広い情報が載っている
Y
Y

陸上ブログの”Y-RUNNING.COM”を運営している” Y”といいます。詳しいプロフィールはこちら。この記事が気に入ったら、Twitterなどでシェアしてもらえると嬉しいです!

コメント

タイトルとURLをコピーしました