「練習メニューを考えてみたけど、具体的にどんなメニューを組めばいいのか分からない…」
・1回あたりの走行距離は?
・つなぎのjog、セット間のRest時間は?
・何セットやればいいのか?…etc.
「そもそも中長距離のトレーニングメニューって、どんな種類や効果があるの?」
こういった悩みや疑問を持ったこと、一度はあるのではないでしょうか?
これらの悩みや疑問は、中長距離トレーニングの種類・効果を知ることで解決できます。
段階的な成長もイメージできるようになるので、1500m3分台・5000m14分台がより現実的なものになります。
そこで今回は、中長距離のトレーニングメニューの種類・効果について解説していきます。
中長距離トレーニングの種類
トレーニングの種類は、以下の5つに分類できます。
メニューを組む際の基礎となるので、しっかり押さえましょう。
各種トレーニングの効果・強度
各種トレーニングについて、以下の観点からそれぞれ解説していきます。
①トレーニング強度(%VO2maxまたは%HRmax)
②1回あたりの練習量の上限・範囲
③トレーニング効果・目的
④運動と休息(セット間Rest)の割合
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
E(Easy) イージーランニング
まず、1つ目はEランニングです。
名前の通り、楽に走り切れるペースでのランニング、いわゆるjogのことを指します。
目標走行距離に達するためやポイント練習の疲労から回復するためにおこないます。
①トレーニング強度(%VO2maxまたは%HRmax)
→59〜74%VO2max(65〜78%HRmax)
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→30〜150分
③トレーニング効果・目的
→心臓の強化と毛細血管新生の促進
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→休息を挟まない
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→25〜30%
それぞれ解説していきます。
①トレーニング強度
→59〜74%VO2max
(65〜78%HRmax)
Eランニングは強度が低いからこそ、良いフォーム・走動作を保つことが重要です。
特にポイント練習の翌日など、疲れているときや脚が重いときほどフォームを意識する必要があります。
なぜなら、乱れたフォームで走り続けるとケガのリスクが高まったり、誤ったフォームが身に付いてしまうためです。
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→30〜150分
Eランニングは30分間以上続けると効果が大きいといわれています。
そのため、jog1回あたり最低30分間は走るようにすると効率の良いトレーニングができます。
また、ロング走を行う場合も走行距離は少しずつ増やしていきましょう。
Eランニングとはいえ、極端に走行距離を増やすと必ずケガに繋がります。
jogに起因するケガはボディーブローのように徐々にダメージが蓄積していくことで生じるケースが多いので、身体の異変に気付きにくいという側面があります。
③トレーニング効果・目的
→心臓の強化と毛細血管新生の促進
Eランニングの効果として、主に以下の4つが挙げられます。
このなかで、特に意識して欲しいのが「ⅱ.心臓の強化」です。
上記の通り、心収縮力が最大になるのは60%HRmaxのときです。
つまり、60%HRmax以上のペースでjogをすることは目的から逸れているということです。
僕自身も普段のjogを3’40〜4’00/kmペースでおこなっていましたが、疲労が溜まるばかりで全然タイムが伸びませんでした。
ゆっくりしたペースで走ることも重要であることを忘れないようにしましょう。
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→休息を挟まない
先述の通り、Eランニングは最低30分間継続することをオススメします。
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→25〜30%
ちなみに、週間走行距離は4〜6週間同じ距離を走った後に伸ばすことをオススメします。
あまり調子の良くない週やレースに備えたいときは、適宜ロング走の時間を短縮することで調整しましょう。
M(Marathon) マラソンペースランニング
2つ目はMランニングです。
Eペースより少し速いペースのランニングです。
生理学的な効果はEランニングと変わりません。
①トレーニング強度(%VO2maxまたは%HRmax)
→75〜84%VO2max
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→40〜110分
③トレーニング効果・目的
→マラソンのレースペースに慣れる
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→休息を挟まない
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→15〜20%(20%または29kmのどちらか短い方)
①トレーニング強度
→75〜84%VO2max
10kmのレースタイムより約3分遅いタイムをMペースとします。
例えば…
・10km自己ベストが33分(3’18/km)
・33分+3分=36分→3’36/km=Mペース
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→40〜110分(110分または29kmのどちらか短い方)
持続的なEランニングやMランニングを行うときは栄養ドリンク等を飲まないようにすることをオススメします。
なぜなら、糖以外の成分が入ったドリンクを控えることで身体が糖を節約することを覚えるためです。
エネルギーの多くを糖として摂取すると、脂肪代謝への依存を若干大きくすることができるといわれています。
つまり、脂肪をエネルギー源として利用できる割合が増えるということです。
③トレーニング効果・目的
→マラソンのレースペースに慣れる
Mペースの生理学的効果はEランニングと同じです。
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→休息を挟まない
Eランニングと同じく、基本は休息を挟まずに走ることをオススメします。
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→15〜20%(20%または29kmのどちらか短い方)
例えば、1週間に60km走るのであれば、Mペースで走る距離は最大12km(=60kmの20%)までとなります。
逆に1週間で145km以上走る場合であってもMペースは最大29kmまでとなります。
(1週間で150km走る場合、150km×20%=30kmとなるが29kmまでに抑える)
T(Threshold) 閾値ランニング
3つ目はTランニングです。
乳酸性作業閾値(LT値)付近でおこなうランニングです。
いわゆるペース走などがTランニングに該当します。
①トレーニング強度(%VO2maxまたは%HRmax)
→83〜88%VO2max(88〜90%HRmax)
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→最大20分(テンポ走)または5〜20分(クルーズインターバル)
③トレーニング効果・目的
→持久力強化
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→運動:休息=5:1
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→10%
①トレーニング強度
→83〜88%VO2max(88〜90%HRmax)
Tランニングは「快適なキツさ」を目安としましょう。
練習であれば20〜30分間は維持できるくらいの強度です。
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→最大20分(テンポ走)または5〜20分(クルーズインターバル)
Tランニングにはテンポ走とクルーズインターバルの2種類のトレーニング方法があります。
また、Mペースの中にTペースを数回組み込むという方法もあり、
・TペースからMペースに戻す方がキツい
・風やアップダウンによるペースの上下に対応できるようになる
などの特徴・メリットがあります。
③トレーニング効果・目的
→持久力強化
Tランニングの目的は「血中の乳酸を除去し十分処理できる濃度に抑える能力」を高めることです。
つまり、少し速めのペースで持ち堪えることを身体に覚えさせるということです。
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→運動:休息=5:1
例えば、Tペース=3’15/kmの場合、1.6km=5’12なのでRestは1分と設定します。
具体的には以下のようなメニューが挙げられます。
{T1.6km・Rest1分}×5
{T3.2km・Rest2分}×3 など
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→10%
乳酸性作業閾値(LT値)については、こちらの記事を参考にしてください。
VO2maxやランニングエコノミーについても解説しています。
I(Interval) インターバルトレーニング
4つ目はIランニングです。
VO2maxの向上に有効であり、非常に重要なトレーニングです。
①トレーニング強度(%VO2maxまたは%HRmax)
→95〜100%VO2max
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→上限5分
③トレーニング効果・目的
→有酸素性作業能(VO2max)の向上
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→運動:休息=1:1
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→10kmまたは8%のどちらか短い方
①トレーニング強度
→95〜100%VO2max
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→上限5分
ちなみに、完全に休息してからVO2maxに達するまで90〜120秒かかるといわれています。
つまり、VO2max向上につながるのは再び走り始めて少なくとも1分半以上経過してからということです。
もし、1分半未満で走ることを中断してしまうと、インターバルトレーニングとしての効果はあまり得られません。
③トレーニング効果・目的
→有酸素性作業能(VO2max)の向上
より多くの練習効果を得るにはVO2maxペース(vVO2max)での走行時間を長くすることが重要です。
・「最小刺激で最大効果を引き出す」ことが重要
インターバルトレーニングをおこなうにあたり、意識するべきことがあります。
それは最小刺激で最大効果を引き出すことです。
VO2max到達時間は、VO2maxペースより速く走ってもVO2maxペースで走る場合と同じです。
つまり、適正ペースより速く走っても練習効果は同じということです。
むしろ、前半に適正ペースより速く走ったことで、後半は適正ペースを保てなくなり練習効果が減ります。
要するに、VO2maxペース(=最小刺激)で走ることが最も効率的だということです。
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→運動:休息=1:1
例えば…
(I 800m・jog2分)×6 ← 800m2’00設定
(I 1000m・jog3分)×5 ← 1000m3’00設定
ただし、ショートインターバルを行う場合はリカバリーは走行時間より短くします。
なぜなら、休息を短くすることで2本目からは既にVO2が上昇した状態でスタートできるためです。
短時間でVO2maxに達することができればVO2maxでの走行時間も長くなるので、練習効果も高まります。
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→10kmまたは8%のどちらか短い方
また、インターバルトレーニングには距離ではなく時間を基準におこなう方法もあります。
R(Repetition) レペティショントレーニング
5つ目はRランニングです。
いわゆるスピード練習に当たるのが、レペティショントレーニングです。
主に200〜800mを繰り返すメニューが中心となります。
①トレーニング強度(%VO2maxまたは%HRmax)
→105〜120%VO2max
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→上限2分
③トレーニング効果・目的
→無酸素性作業能の向上、ランニングの経済性、スピードの向上
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→運動:休息=1:2〜3
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→8kmまたは5%のどちらか短い方
①トレーニング強度
→105〜120%VO2max
②1回あたりの練習量の上限・範囲
→上限2分
③トレーニング効果・目的
→無酸素性作業能の向上、ランニングの経済性、スピードの向上
Rランニングは、十分に身体が回復した状態でおこない正しい走動作を保つことが重要となります。
フォームが崩れてしまっては、「ランニングエコノミーの向上」という練習目的から逸れてしまうためです。
また、Rランニングはレベルの異なるランナー同士が集団で行うべきではありません。
なぜなら、メニューについていけないランナーはフォームを崩すうえに練習効果も減ってしまうためです。
④運動と休息(セット間Rest)の割合
→運動:休息=1:2〜3
完全休息ではなく、Rランニングと同距離のjogでつなぐという方法もあります。
例:{(R200m・jog200m)×8・jog800m}×2
⑤週間走行距離に対する練習量の割合
→8kmまたは5%のどちらか短い方
ちなみに、トレーニングは距離ではなく時間で考えることをオススメします。
距離で考えてしまうと、遅い選手ほど運動刺激を受ける時間が長くなってしまうためです。
接地回数や接地衝撃が多くなれば、その分疲労が蓄積したり怪我のリスクが高まります。
まとめ
今回は長距離のトレーニングメニューの種類・効果について解説してきました。
トレーニングの種類・効果を知っておくことは、具体的なトレーニングメニューを組む際に非常に重要となります。
ポイントをしっかり押さえて、効率的なトレーニングをおこなっていきましょう。
陸上ブログの”Y-RUNNING.COM”を運営している” Y”といいます。詳しいプロフィールはこちら。この記事が気に入ったら、Twitterなどでシェアしてもらえると嬉しいです!
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