【練習メニューの設定ペース】VDOTとは?VO2maxとの違いは?

ランニング

突然ですが、皆さんはVDOTをご存知でしょうか?

「もちろん知っている」という方もいれば、「聞いたことない…」という方もいるかと思います。

また「聞いたことはあるけど、よく分からない…」という方もいるのではないでしょうか?

VDOTとは、『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』の著者ジャック・ダニエルズが提唱したパフォーマンスレベルを示す指標のことです。

このVDOTを活用することで、皆さんも自己ベストを更新することができるかもしれません。

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僕自身、VDOTを基に練習メニューを組み立てるようになってから、1500m3分台・5000m14分台を達成することができました!

ただ、「そもそもVDOTって何?」「VDOTとVO2maxは何が違うの?」などの疑問もあるかと思います。

そこで今回は、VDOTやVO2maxとの違いについて解説していきます!

VO2maxについて

VDOTとの違いを明確にするために、まずはVO2maxについて解説していきます。

VO2maxとは

VO2max(V-dot-O2)とは1分間あたりの最大酸素摂取量のことを指します。

量(volume)を表すVの上に1分間あたりの量であることを示すdot(・)がつくため、VO2maxと表記します。

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VO2maxの単位はml/kg/分(=体重1kgあたりの1分間の酸素摂取量)です!

なぜ、1分間当たりの量に換算する必要があるのでしょうか?

それは、異なる酸素摂取量を正確に比較するためです。

例えば、以下のような例が挙げられます。

例:以下の項目を2人のランナーで比較
・呼気量(VE)
・酸素摂取量(VO2)

A:30秒間呼気を採取
・呼気量(VE)=65ℓ
・酸素摂取量(VO2)=2000㎖

B:40秒間呼気を採取
・呼気量(VE)=75ℓ
・酸素摂取量(VO2)=2500㎖

VE・VO2ともにBの方が多い?→❌
       ↓
呼気を採取する時間が異なるため
       ↓
そこで、1分あたりの量に換算する

A:30秒間×2=1分
・呼気量(VE)=65ℓ×2
 →130ℓ/分
・酸素摂取量(VO2)=2000㎖×2
 →4000㎖/分

B:40秒間×1.5=1分
・呼気量(VE)=75ℓ×1.5
 →112.5ℓ/分
・酸素摂取量(VO2)=2500㎖×1.5
 →3750㎖/分

したがって、VE・VO2ともにAの方がBよりも多い

VO2maxに差があってもレースタイムは同じになる?

これまで、VO2maxは持久力の最も重要な指標と考えられてきました。

しかし、VO2maxに差があるランナー同士でもレースでは同じ成績をおさめることがあります。

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なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

それは、ランニングの経済性に差があるためです。

例として、以下のグラフを参考にしてみましょう。

グラフについて簡単に整理すると、以下の通りとなります。

・ランナーAとBの能力を示したグラフ

ランナーAとBのVO2maxには差がある
 ・ランナーA:VO2max=73
 ・ランナーB:VO2max=63

ランナーAとBの自己ベストは同じ

ランナーAの方がVO2maxが高いのに、なぜBは同じタイムで走れるのか?

それは、ランナーBの方がランニングの経済性が優れているためです。

ランニングの経済性が優れている=同じスピードをより少ない酸素量で走ることができるということです。

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自動車で言う「燃費が良い」という表現に近いです!

例として先程のグラフを見てみると、以下のことが分かります。

例:ランニング速度270m/分のときの酸素摂取量(㎖/kg/分)

グラフより…
・ランナーA:59㎖/kg/分
・ランナーB:51㎖/kg/分
     ↓
同じスピード(270m/分)でも、Bの方がより少ない酸素量で走っている

そのため、Bの方が酸素摂取量が少なくても(=VO2maxが低くても)ランナーAと同じスピードで走れるのです。

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つまり、AとBのVO2maxに差はあるが「VO2maxに達したときのランニング速度」は同じということです。

この「VO2maxに達したときのランニング速度」のことをvVO2max(最高有酸素的ランニング速度)といいます。

VO2maxよりも重要なvVO2max

vVO2maxは、VO2maxやランニングの経済性よりも重要な指標であるといえます。

なぜなら、ランニング速度とVO2maxの相関を示すからです。

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例えば、以下のようなケースで考えると分かりやすいと思います。

まずは、グラフについて簡単に整理しましょう。

ランナーAとBのVO2maxは同じ
 (A・BともにVO2max=73)

・しかし、ランナーBの方が速く走れる

まず着目したいのが、AとBのVO2maxは同じなのに、Bの方が速く走れるという点です。

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なぜ、同じVO2maxなのにランナーBの方が速いタイムで走れるのでしょうか?

それは、2人のvVO2maxに開きがあるためです。

vVO2maxに着目して、先程のグラフをもう一度見てみましょう。

・ランナーA
vVO2max=339.37m/分
(VO2maxペースで1分間に339.37m走れる)

・ランナーB
vVO2max=351.7m/分
(VO2maxペースで1分間に351.7m走れる)

つまり、1分間で約12mの差が生じる
(B:351.7m/分-A:339.37m/分=12.33m/分)
     ↓
5000mのレースタイムに換算すると…
ランナーA:14’44(2‘56“8/km)
ランナーB:14‘13(2‘50”6/km)
     ↓
VO2maxが同じでも、レースタイムに差は生じるということ

これこそが、VO2maxよりもvVO2maxを基準とすべき理由です。

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また、vVO2maxが同じならば他の種目・距離でもほぼ同じ成績をおさめます

実例として「女子選手3名の3000mの記録とVO2max」を示した、以下のグラフが参考となります。

VO2maxは最大で12㎖/kg/分もの開きがありますが、自己ベストは1秒差しかありません。

このように、vVO2maxはランナーの能力を示す重要な指標であることが分かります。

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では、どうすればvVO2maxを高めることができるのでしょうか?

vVO2maxを高める方法には、以下の3通りがあります。

VO2maxを高める方法
  1. VO2maxを高める
  2. ランニングの経済性を高める
  3. 1と2の経済性の両方を高める

言葉だけではイメージしづらいですが、以下のグラフで考えると分かりやすいと思います。

グラフからも分かるように、①VO2max②ランニングの経済性が向上するとvVO2maxも上昇します。

最もvVO2maxが上昇するのは、③VO2maxとランニングの経済性の両方が向上したときです。

そのため、VO2maxとランニングの経済性のどちらも強化することが大切です。

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以上がVO2maxについての解説になります。
もう一度おさらいしておきましょう。

VO2maxって?
  • VO2max=1分間あたりの最大酸素摂取量のこと
  • VO2maxだけを指標とすることはオススメしない
  • VO2maxに差があっても同じタイムになることがあるため
  • VO2maxが同じでもタイムに差が出ることもあるため
  • vVO2max(最大酸素摂取量時のランニング速度)を重視する
  • →vVO2maxが同じなら、異なる種目でも同じタイムで走る

VDOTを用いてトレーニング強度を決める

ここからはVDOTについて解説していきます。

結論、VDOTとは計算上の擬似値のVO2maxのことを指します。

要するに、VO2maxよりも正確なVO2maxだということです。

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ただ、これだとVDOTとVO2maxの違いが分からないですよね。

そこで、VDOTの求め方や練習・レースへの応用方法なぜVDOTがVO2maxよりも正確なのか?について解説していきます。

VDOTの求め方

VDOTは以下の式で求められます。

VDOT=①VO2÷②%VO2max

VO2
→酸素摂取量
・%VO2max
→VO2maxの何%で走っているのか?

そして、VDOTを求めるためには以下の3つの変数が必要となります。

  • VO2max
  • 一般的なランニングの経済性(最低4段階)
  • レースで走り続けられる時間別の%VO2max

そこで上記3つの変数をもとにVDOTを求めてみましょう。

まずは「VDOT=①VO2÷②%VO2max」のうち、①のVO2(酸素摂取量)を算出します。

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今回は、例として8kmのレースを30分(3’45/km)で走るランナーのVDOTを求めてみましょう。

以下のグラフは、一般的なランニングの経済性とvVO2max値、VO2max値との関係を示したものです。

3’45/km=約267m/分なので、グラフよりVO251.7ml/kg/分と求められます。

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これでVDOT=①VO2÷②%VO2maxのうち、①VO2が求められました。

続いて、②の%VO2maxを算出しましょう。

以下のグラフは、レース持続時間と%VO2maxとの関係を示したグラフです。

今回は8kmのレースを30分(3’45/km)で走った場合を想定しているので、グラフより93.7%VO2maxと求められます。

これで、VDOTの算出に必要な①VO2と②%VO2maxが分かりました。

したがって、①51.7ml/kg/分÷②93.7%VO2max=VDOT55.2となります。

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ちなみに、研究室などで実際に測定したVO2maxがVDOTよりも低い場合、一般的なランニングの経済性よりも優れているといえます。

なぜなら、VDOTは平均的なランニングの経済性に基づいて計算されているためです。

代表的な距離のVDOT

ここまで、VDOTの求め方について解説してきましたが、VDOTはレースタイムから求めることができます

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(ただ、VDOTがどういうものか少しでも理解したうえで参考にして頂きたく、解説を設けました)

以下の表は、各種目の自己ベストに相当するVDOTを示したものです。

まずは、自身の自己ベストから該当するVDOTを確認していきましょう。

レースタイムから求めたVDOT一覧

自己ベストと照らし合わせていくと複数のVDOTが該当することもあると思います。

その場合、最も高いVDOTをトレーニングペースの設定に使っても問題ありません

VDOTを基にしたトレーニング強度

自己ベストからVDOTを求めることができたら、次は求めたVDOTを用いてトレーニング強度を決めていきましょう

以下の表は、「VDOTを基にしたトレーニング強度の一覧表」です。

VDOTを基にしたトレーニング強度(Eペース〜Tペース)
VDOTを基にしたトレーニング強度(Iペース〜Rペース)

ちなみに、IペースとRペースには一部空欄となっている箇所があります。

これはトレーニング強度が高すぎるためです。

例えば、Iランニングは1回あたりの走行時間を上限5分までと推奨しています。

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なぜなら、5分以上走ることで…
・ペースを維持できず練習効果が減る
・フォームが崩れてケガのリスクが大きく高まる
などのデメリットが生じるためです。

ちなみに「Eペース、Mペースってなに?」という方は、以下の記事を参考にしてください。

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各ペース(E・M・T・I・R)の効果目的1回あたりの練習量(距離)について解説しています。

6秒ルール

ちなみにVDOTの一覧表がなくても、おおよそのトレーニング強度を決める方法があります。

それが6秒ルールです。

6秒ルールとは、1500mのレースペースから各トレーニング強度を決めることができるというものです。

具体的には以下のとおりです。

6秒ルール
  • Rペース
    =1500m自己ベストのペース(XX”/400m)
  • Iペース
    =①Rペース+6秒
  • Tペース
    =②Iペース+6秒

例えば、1500mのタイムが4‘40の場合…

  • Rペース=75/400m
  • Iペース=81/400m
  • Tペース=88/400m

といった感じになります!

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6秒ルールで算出したペースは、先程の「VDOTを基にしたトレーニング強度の一覧表」と比較しても正確であると言えます。

ただし、この法則は速いランナーほどより正確なものになります

そのため、VDOT40〜50台のランナーは7〜8秒ルールとして適用しましょう。

トレーニング強度を記録して見える化する

VDOTを基準に練習をおこなったら、トレーニング記録をつけるようにしましょう。

なぜなら、トレーニング記録を残すことで以下のメリットを享受できるためです。

トレーニング記録を残すメリット
  • オーバーワークを防げる
  • 過去のトレーニングが結果にどう繋がったのか分かる

ありきたりかもしれませんが、これらは非常に重要です。

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特に、過去の練習メニューから自分に合ったメニューを発見できれば、コンスタントに結果を出せるようにもなります。

トレーニング強度別ポイント係数

記録をつける際には、距離だけでなくトレーニングタイプ別(E・M・T・I・R)に刺激量を記録するようにしましょう。

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では、どうすればタイプ別の刺激を記録することができるのか?

その際に役に立つのがトレーニング強度別ポイント係数です。

以下の表を参考に、タイプ別の刺激を記録していきましょう。

上記の通り、ポイントは運動強度(%VDOTまたは%HRmax)ごとに細かく変わります。

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ただ、いきなり詳細に記録しようとすると続かないこともあると思います。

そこで、まずは以下の表を目安にポイントを算出することをオススメします。

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ポイント係数を使ってトレーニング記録を見える化できたら、次シーズンのトレーニング計画も立てましょう。

特に、(走行距離ではなく)ポイントを目安にトレーニング計画を立てることをオススメします。

例えば、以下のような例が挙げられます。

  • 今シーズンはIゾーンで100ポイント走った
    →次シーズンは同ゾーンで110ポイントを目指す
  • 1週間のポイントを総合計(EMTIR全てのゾーン)
    →次シーズンの同時期はポイントを何%か増やす

走行距離を増やす感覚に近いですが、いたずらにjogの距離を増やすよりも効果的です。

なぜなら、jogを増やすよりも、高強度練習の質を上げたほうがポイントの合計が高くなる(=練習効果が高い)こともあるためです。

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むしろ、極端にjogの距離を増やすとケガのリスクが高まります。

一定ポイントに達するための強度別練習量

目標ポイントから逆算してメニューを組むときは、以下の表を参考にしてください。

一定ポイントに達するための練習量

例えば、VDOT52のランナーがTランニングで25ポイントに到達するには10km必要だと分かります。

具体的には、T1.6km×6、T3.2km×3、T4.8km×2などの適度にリカバリーをはさんだ練習メニューが考えられます。

実例:練習記録

参考として、僕自身のトレーニング記録をご紹介したいと思います。

※ちなみに、エクセルを使ってポイントを管理しています。

上記のように、グラフ化すると分かりやすいのでオススメです。

トレーニング記録をフル活用し、さらなる自己ベスト更新を狙っていきましょう。

まとめ:VDOTを活用して自己ベストを更新しよう

今回はVDOTとVO2maxの違いVDOTの活用方法について解説してきました。

ここまでの内容をもとに、「自己ベスト更新に向けてやるべきこと」をまとめると以下のとおりとなります。

自己ベスト更新の流れ
  1. レースタイムからVDOTを求める
  2. 求めたVDOTをもとにトレーニング強度を決める
  3. 練習する
  4. 強度別ポイントで練習記録を管理する
  5. 練習記録をもとにメニュー(内容・強度)を適宜変更・調整する
  6. レースに出る+振り返り
  7. 1〜6の繰り返し

ややボリュームのある内容ですが、VDOTは自己ベスト更新に非常に役立ちます。

伸び悩んでいたり、何から手をつければいいのか分からないという方は、ぜひVDOTを活用してみてください!

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ただ、「VDOTを使ってメニューを組んで本当に自己ベストが出るの?」と感じた人もいるかと思います。

そんな方は、以下の記事を参考にしてもらえればと思います。

実際に僕自身が1500m3分台&5000m14分台を出すまでにおこなった練習メニューを紹介しています。

自己ベスト更新に向けて、今日から動き出して行きましょう!

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陸上ブログの”Y-RUNNING.COM”を運営している” Y”といいます。詳しいプロフィールはこちら。この記事が気に入ったら、Twitterなどでシェアしてもらえると嬉しいです!

参考書籍

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