世界で最も偉大な長距離ランナーと呼ばれる民族VSウルトラランナーたちのレースを描いた本。「高級なシューズほど最悪」「人類は長く走れたから生き残れた」など長距離ランナーなら知りたい内容がたくさん詰まっている。
「読めば思わず走りたくなる」まさにそんな一冊。
人類最強の走る民族 タラウマラ族
『BORN TO RUN』は2010年に初版が出ており、僕が買ったのは2019年(第24刷)のもの。ちょうど大学3年になった頃であり、卒業に必要な単位をほぼ取り終えていたため自由な時間が増えた時期でもあった。
この本を買った理由は「走ることの楽しさ」を思い出したかったから。陸上サークルに入部して3年目を迎えるも、未だに高校生の頃に出した自己ベストを更新できずにいたこともあり、いつしか走ることが嫌になっていた。
そんなときに「走るために生まれた」というタイトルに惹かれて手に取ったのがこの本だった。
走ることを愛している
タラウマラ族はメキシコ北西部の銅峡谷(バランカス・デル・コブレ)で生活している民族。超長距離走なら、たとえオリンピックのマラソン選手でも敵わないという。
なぜなら、彼らは走ることを愛しているから。「食べるために走っている」とさえ言えるような彼らの生活において「走ること」は不可欠だという。
著者が言うには、アメリカの長距離ランナーが弱くなったのは「お金が絡むようになったから」だという。
儲けを出すためにシューズメーカーが競って多機能シューズを出す。
その結果、本来の走り方を忘れてしまったり、走ることそのものに楽しみを見出せなくなってしまったた。だから、勝てなくなってしまったというのだ。
この主張については賛否両論あると思う。ただ、「お金目的だけで走るランナー」よりも「走ることが好きで、その結果お金を得ているランナー」のほうが長続きするしタイムも伸びる、と個人的には思う。
最高のシューズは最悪である
「最高級シューズを履くランナーは安価なシューズを履くランナーよりもケガをする確率が32%も大きい」
これはスイスのベルン大学で明らかになった研究結果だという。なぜ最高級シューズを履く方がケガをしやすいのかというと、それはシューズが足本来の自然な動きを阻むからだという。
例えば、裸足で走れば踵から接地することはないが、クッション性の高いシューズを履くと踵から接地してしまう。だから、高級シューズを履くとケガのリスクが高まるという。
ここでいう高級シューズはいわゆる厚底シューズのことを指しているのだと思う。昨今で言えばナイキのヴェイパーフライなどがこれに該当する。
これについては様々な意見があると思うが、僕自信は半分賛成で半分反対といったところだ。
ランニングシューズの進化
シューズが進化すれば記録更新の可能性も高まる。実際、ナイキの厚底シューズが生み出されてからマラソン界では世界記録も更新されている。
それに、今の社会において裸足で走れるコースを見つける方が難しい。もしアスファルトの上を裸足で走ろうものなら、足の裏がボロボロになるのは避けられないだろう。
僕自身も裸足でトラックを走ったことがあるが、2km程度走っただけで皮がめくれて痛かった。
だから「ランニングシューズは要らない」「高いシューズは無駄」ということはないと思う。
厚底シューズのデメリット
一方、厚底シューズばかり履くことはデメリットもあると思う。
やはりシューズの底が厚くなる分、裸足(ないしは薄底シューズ)で走るときとは接地の感覚も異なる。その結果、接地が不安定になり捻挫などケガのリスクが高まってしまう。
その他にも「本来使われるべき筋肉を使わない走りが身に付いてしまい、他の筋肉に負荷が集中してケガにつながってしまう」といった可能性もある。
だからこそ、厚底シューズだけを履いたりすることはオススメできない。もし近所に芝生があれば裸足で走ってみるのも良いと思う。
ベアフットシューズや接地感覚をつかみやすいNIKEのフリーランなどもオススメ。
ナイキ フリー ラン 5.0 2021 NIKE (ナイキ) CZ1884-100 WHT人類は長く走るために進化した
この本を読んで最も興味を惹かれたのが「人類は長距離を走れたから生き残れた」という内容だ。
今の人類の祖先はホモ・サピエンスだと言われているが、同時期に生き残りをかけて併存していたのがネアンデルタール人だという。
結果として彼らは滅んでしまったわけだが、実はネアンデルタール人はホモ・サピエンスよりもフィジカルが強く、大きな脳を持っていたことが化石から判明しているという。
にもかかわらず、なぜホモ・サピエンスが生き残ることができたのか?それは「長距離を走ることができたから」である。
長距離を走れるのは人類だけ
他の動物は走りながら熱を放散することができない。だから長時間走り続けることができれば、必ず獲物は疲弊して動けなくなる。そうやってホモ・サピエンスは生き残ってきたのだという。
一方、ネアンデルタール人は強固な肉体を持つゆえに長距離を走れず、獲物を捕まえられずに滅んでいったという。
だから、「人類が生き残れたのは長距離を走ることができたから」と言っても過言ではない。
「走ること」が好きな自分に誇りを持てた
この事実を知ったとき、なぜだか陸上(それも長距離)をやっている自分に誇りを感じることができたし、とても嬉しかった。
なぜそんな気持ちになったのか?それは多分、これまでの人生において「走ること」は手段であり、それ自体はつまらないもの・苦痛であると扱われてきたからだと思う。
実際、中学や高校では「走るだけの何が楽しいの?罰ゲームじゃん笑」なんて言葉をよく耳にした。
だけど人類が生き残れたのは長距離を走れるように進化したからだ。我々の祖先が長距離を走れなければ人類は滅んでいたかもしれないのだ。
そう考えると、自然と走ることが好きな自分に誇りを持てたし、走ることが好きな人とその楽しさや喜びを共有したいと感じた。
これからも走り続ける
ランニングの目的は人それぞれだと思う。僕のように自己ベストを更新したくて走るヒトもいれば、ダイエット目的で走るヒト、純粋に走ることが好きで走るヒトなど、色んな理由があっていいと思う。
ただ、毎日走り続けていると走ることが嫌になったりすることもあると思う。そんなときにこそ、この本を読んでみて欲しい。自分が長距離を走れることがどれだけ素晴らしいことなのか、改めて認識する事ができると思う。
いつかの論文で目にした文言だが、走ることはまさに芸術だと思う。僕はこれからも走り続けていきたい。
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